日本で公共交通機関を利用するならスマートフォンでsuicaをはじめとするNFC決済で乗り降りする方が多いかと思います.電車もバスもひとつの端末で乗り降りできるので非常に便利です.
スマートフォンのアプリを利用できれば残高を管理できますし,必要があればオンラインでチャージもできます.日本ではスマートフォンで公共交通機関の決済は当たり前の光景ですが,海外ではあまり目にすることがありませんでした.
しかし2020年ごろを境に米国でスマホで公共交通機関を乗り降りできるネットワークが増えてきました.2022年にはシカゴで利用した事例を紹介しました(シカゴの公共交通機関はスマホで改札もチケット購入も完結 | Ventraアプリ).
今回はサンフランシスコへ行く機会がありましたので,サンフランシスコ周辺のベイエリアの公共交通機関を利用する際に便利なclipper(公式サイト)について紹介します.clipperはカードタイプでは従来から使われてきましたが,残高を確認するためにわざわざ券売機を利用しなければならず面倒でした.たまにしか訪れない人であれば,あまりたくさんの金額をチャージせずに使いたいのではないのでしょうか.
今回はサンフランシスコでBARTとcaltrainを利用した経験を踏まえて,スマホ乗車 (clipper) をご紹介したいと思います.
スマホ乗車のメリット・デメリット
スマホ乗車を利用するメリットは以下の通りです.
- わざわざカードを取り出す必要がない
- 残高をスマホで確認できる
- スマホでチャージできる
- オフラインでも改札は通れる
サンフランシスコのダウンタウンでは券売機周辺にホームレスがたまっています.”券売機の使い方を教えてやるからチップをくれ”と絡んできます.券売機を利用するということは現金やクレジットカードを取り出す必要もありますので,少し怖いですね.
さらに怖いのは残高不足で改札でのトラブルです.基本的には日本の公共交通機関ほど混み合っていることはありませんので,改札で詰まった場合でも後ろからの圧力を感じることはありませんが,不慣れな地で些細なトラブルに会うと少し気が滅入るものです.
スマホであれば気になったら公共交通機関に乗っている間でもオンライン上でチャージすることができます.バスからmuniに乗り継ぐ際には一定時間内であれば追加料金なく乗り継ぐことができます.これが適用されているのか不安になることもありますが,常にスマホ上で残高確認ができるので海外での不安も払拭できます.
オフラインでも改札は通過できますが,チャージをするためにはインターネットにつながる必要がありますので,出先でインターネット環境がない場合にはホテルや空港などで事前にチャージしておきましょう.
スマホ乗車のデメリットは以下の通りです.
- スマホをなくすと利用できなくなる
- ひったくりに会う可能性がある
やはりスマホは安くないものですので,取り出した際に顔にパンチをもらってスマホだけ取られる可能性もあります.私自身こうした経験はありませんが,ネット上では事件に巻き込まれた事例も目にします.プラスチックカードを利用していれば,取られるのはカードだけで済みます.
clipperをスマートフォンに導入する
clipperのアプリは公式からリリースされていますが,日本在住の方はダウンロードすることができません.利用するためにも米国の住所を入力する必要があり,大変手間がかかってしまいます.
公式アプリは主に乗り換え検索などの機能があるそうなのですが,これはgoogle mapがあれば十分です.米国の公共交通機関であれば遅延時間などもリアルタイムで反映されます.料金も表示されますので,必要な金額も事前に把握することができます.
とりあえず利用したいという方はiOSであればウォレットアプリから画面右上にあるプラスマークからclipperを探します.次の画面で交通系ICを選択し,米国の欄からclipperを選択します.新規で発行する場合には次への画面でチャージする金額を選択します.もしここで従来のプラスチックカードを持っていれば,読み込むことができます.私はプラスチックカードにわずかに残っているはずなので,スマホに読み込んでみたいと思います.
お手持ちのカードを追加を選択し,本体背面とカードをしばらくの間重ねます.しばらくしてうまく読み込まれると,残高が反映されます.
大事な設定のひとつがエクスプレスカード設定です.
本来iPhoneなどで決済をする際には生体認証が必要になりますが,エクスプレスカード設定をすることで生体認証を省略することができます.エクスプレスカードの設定を省いてしまうと改札で生体認証をする必要があり,スムーズに改札を通ることができません.
BARTとcaltrainでスマホclipperを使ってみた
BARTでサンフランシスコ国際空港からオークランドへ
まずはサンフランシスコ国際空港からOaklandまでBARTで移動しました.Oaklandはサンフランシスコ国際空港から北行きのBARTに乗り,サンフランシスコを通過して湾を横切ったところに位置しています.
サンフランシスコ国際空港からBARTに乗る方の多くは海外から訪れている方が多いかと思います.
サンフランシスコ国際空港ではタイミングによっては券売機で切符を購入するために多くの方が列をなしていることがしばしばあります.日本ではあまり見かけない光景かもしれません,いくつか券売機が置かれていても,なかには故障中で放置されているものがあることもあります.
事前にアプリを入れてチャージしておけば,長蛇の列を横目に改札を通ることができます.
日本の改札を通る際にはワンタッチでさっと改札を通過できる印象ですが、米国の鉄道ではタッチしてからワンクッション待たないとゲートが開きませんので、注意して下さい。タッチする場所はbartであれば改札の真上に丸いclipperのマークがある場所がありますので、ここにスマホの裏面を合わせます。
初乗り金額さえチャージされていれば、通過することができます。
改札を出る際も同様に改札でタッチすることで、乗車区間に応じた金額が差し引かれる仕組みになっています。
利用履歴には乗車区間なども地図で表示されます。
caltrainでサンフランシスコからサンノゼへ
caltrainはサンフランシスコからサンノゼを結ぶ中距離列車です。途中スタンフォードやサンタクララなどを経由します。今回はサンフランシスコでの所用を終えてサンノゼ国際空港から帰国するための便に搭乗するためにサンノゼへ移動する際に利用しました。
注意点はいくつかあります。
caltrainは各駅停車、急行など列車によって停車駅が異なることがありますので、事前に公式サイトから時刻表を調べておいてください。
clipperでcaltrainに乗る場合には駅にある端末にタッチします。OK的な画面が表示されれば問題ありません.タッチすると利用履歴に差し引かれた画面が表示されます.
サンフランシスコ駅ではその画面を改札で立っている駅員に見せますが,他の駅では駅員による改札はありませんので,そのまま乗車します.
乗車前にタッチした利用履歴画面は列車内で検札にくる車掌にも見せる必要があります.車掌さんが覚えていてくれれば確認が1度きりですが,忘れていたり違う車掌さんになると改めて画面を見せる必要があります.
利用画面はをウォレットアプリでclipperを選択した後に,画面下側にタッチした駅名が表示されていますので,それを選択すると表示されます.
clipperdに乗車する際には注意点が一つあります.
caltrainでは乗車駅のサンフランシスコ駅でタッチした際に14.45米ドルが差し引かれています.
BARTなどと異なりcaltrainでは最大運賃を差し引いた後に降車駅で区間を考慮して差分を払い戻す仕組みになっています.caltrainは降車時や駅を出る際に改札がありませんので,徴収漏れを防ぐためにこうした運用をするしかないのでしょう.
逆にいえば,帰国前にcaltrainに乗るつもりでギリギリの運賃しかチャージされていないと,場合によっては残高不足で乗車時にタッチする際にエラーとなってしまう可能性がありますので注意してください.
caltrainですがスーツケースを持ち込んで乗車することはできますが,大きすぎるスーツケースは通路を塞いでしまう可能性があります.多くの座席が前後の座席とのスペースにゆとりがありません.
置くとしたらスーツケースマークが車両の入り口付近にある荷物専用スペースを利用するか,数少ない足元のスペースにゆとりがある座席を選びましょう.
公式webサイトにも一応持ち込みができるスーツケースのサイズが示されています.中距離列車ですので新幹線のようなリクライニングや電源はありません.
今回はサンノゼ駅で下車し,さらにLRTにも乗車しました.こちらもclipperで乗車することができます.
まとめ
さていかがでしたでしょうか.
米国でもスマホで公共交通機関の乗り降りができるようになってきています.残高管理が簡単にでき,なにより切符などを利用するたびに購入しなくて良いメリットは大きいと思います.
ぜひ興味が湧いた方はスマホ乗車に挑戦してみてください.
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