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学振、科研費申請書を書くなら、審査員に投資をしたいと思わせる必要がある|参考図書紹介あり

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競争的資金の獲得は研究職に就く人にとって重要な活動資金のひとつになります。公的機関に所属している人でも競争的資金を獲得していれば、ある程度自由な研究ができると聞きます。

研究調書(申請書)を書くにあたって書き方に関するウェブサイトや書籍はたくさんあります。

私もこれまで研究調書の書き方に関する書籍やサイトを参考にしてきました。

しかし多くの書籍では書き方に関して書かれている内容は大きな違いはありません。項目ごとに記載すべき内容を解説しているものが多いように感じます。

しかしこうした点をおさえていても、採択されない場合もあるでしょう。

もしかしたら研究調書を書くにあたって、ある視点が欠けているのかもしれません。


今回はちょっと違った視点から研究調書の書き方、推敲の方法について紹介したいと思います。

こんな悩みをお持ちの方におすすめ

・これから研究調書を書き始めるが、どのように書いたら良いかわからない

・競争的資金の研究調書がなかなか採択されない

・企業研究者の方で経営陣に研究事業の重要性をどのように説明したらわからない

こうした悩みを抱えている若手研究者向け(大学院生のJSPS特別研究員や科学研究費助成事業の若手や基盤Cなど)の内容となっています。

研究調書(申請書)を書くなら出資者側の視点を持つべき

はじめに一番大事な視点を共有したいと思います。

その申請書を読んだ審査員が「この研究に投資したい」と思うような研究調書の内容になっているか、ということです。

自分が投資をする立場になった時に「どんな研究に投資したいか」を考える必要があります。

例えば経営に関する初学者向けの書籍を読んでみると、お金を出す側の視点を垣間見ることができます。

経営者は事業を進める上でお金が必要になります。そして事業がさらにお金を生み出す仕組みを作っていかなければいけません。

ただし、まず初めにお金がなければ事業を立ち上げることができませんので、事業計画や見通しを出資者に示した上で融資を受ける必要があります。

ここで出資してくれる側から資金を調達するためには「お金を私に出資して頂けたらこんな良いことがありますよ」「さらにお金を生み出す流れを作りますよ」「私たち人類が豊かな生活を送れるようになりますよ」という明るい未来を提案できなければいけません。


一方、研究も同じような視点に立って、審査員の方に投資してもらうための書き方をする必要があります。

申請書では投資をした研究が大成した暁に少しでも「未来が明るくなるか」「人類が豊かになるか」そういった研究でなければお金を出したいと思ってもらえません。

基礎研究でもメカニズム解明の先にある応用研究への展望や、さらにその先に見えてくる景色というものがあるはずです。

感情論ではありませんが出資者側に「この研究には金を出しても良いかも」と心を揺さぶる必要があります

よく審査員の立場に立って書く、ということは言われますが、もし自分がお金を出す側に立った時に、どういった事業にならお金を出しても良いと思うでしょうか。

米国のNSF(National Scientific Foundation)による競争的資金の獲得のためのネタ帳にも「審査員の立場に立って書くべき」と書かれています(下記リンク参照)。

https://cadrek12.org/sites/default/files/Tips%20for%20Developing%20NSF%20Proposals_0.pdf

こういった資料を読んでいくと、研究調書の中で求められている内容は日本とほぼ変わらないな,というのが私の印象です。

自分の研究の位置づけを示すことができているか

ではどのような事業にお金を出したいと思うでしょうか。

先ほど示した視点も重要ですが、お金を出すに値することを専門分野外の人はどのように理解してもらえるでしょうか。

それは「自分の研究の位置付けを正確に示すことができているか」という点です。

自分が取り組む研究には究極の大目標というものがあるかと思います。

これはある意味であなたが想像する夢物語の世界くらいのスケールです。

そして容易にその大目標へ到達できないのは、いくつかの壁が存在するからです。

途中に立ちはだかる壁の数や高さを含めて、大目標へ至るまでの道筋を示した上で取り組む研究ではどこまでの壁を超えることを目指すのか、大目標への至る道筋の中での位置付けを明確にする必要があります。

大目標へ至る道筋の全体像を示すことができなければ、審査員は研究調書に書かれている研究を取り組む意義を理解できません

ある程度の大風呂敷は必要ですが、ウソはいけません。

審査する人は近からず遠からずの分野の人なので、ウソはバレてしまいます。

確かに専門用語を使わない、ある程度の補足説明をすることも大事ですが、用語や概念を理解したところで課題の重要性を理解してもらえなければ意味がありません。

補足

誤解がないように補足したいと思いますが、これまで世に出ている研究長所書き方のコンテンツを否定しているわけではありません

むしろ最低限抑えるべき内容として私も理解しています。

ただし、書き方を理解していても何度も採択ない状況が続くということは審査員の心に響かない何らかの理由があるのだと思います。

そういった方に新しい視点として研究調書の改善に向けた内容になっています。

まとめ

これまで世に出ている科研費の書き方本とは異なり、投資家の視点で研究調書が書けているかという提案をさせていただきました。

ずっと長い間研究一直線で取り組んできた人には欠けている視点だったのではないかと考えています。

教育機関の先生の中にも科研費がないと自分の研究資金が乏しく、研究のブラッシュアップや普及活動、情報収集に必要な学会発表にも十分に行けない状況もあると聞いています。

学生の中にも自分で競争的資金を取りに行く必要がある人もいるかと思います。

今回ご紹介した内容が今後研究調書を書く際の一助になればと考えています。

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